大人も自由研究

調べて書く。夏休みじゃないのに宿題してるみたい。

右からか左からか? 縦か横か? 選挙ポスター掲示板の区画順

前から不思議に思っていた。

選挙のポスター掲示板、地域によって表示順が違うのだ。

なぜなんだろう。

世の中は今参院選の真っ最中。週末の投票日を迎える前に、少し調べてみてわかったことを記してみる。

こちら、千葉県内のポスター掲示板。

そしてこちら、東京都のポスター掲示板。

千葉は、左側から縦並び。東京は右側から横並びだ。同じ国政選挙で、どうしてこんなことが起きるんだろう。

規程で定められていた

調べてみると、ポスター掲示板の区画の番号は、各都道府県の規程で定められていた。全国知事会のホームページに、「都道府県例規集」というリンク集がある。ここで一つ一つ調べてみた。「◯◯県選挙等執行規程」「公職選挙法等施行規程」「選挙運動実施規則」など名前はさまざまだが、ポスター掲示場についての規程があり、「右上段から右下段への順に、順次左へ」「左端の上段を1、下段を2とし、以下右端の方向へ」などと記されていたり、様式が図示されていたりするのだ。結果を地図にまとめてみた。

赤は右側が「1」の都道府県、青は左側が「1」の県だ。こうして見ると、青が圧倒的に少ないことや東日本に集中していることがわかる。

明記されていない場合も

ちなみに、並びの縦横については、明記しているところもあれば、明記していないところもあった。もっとも、明記していた所はすべて縦で、横を明記していたところはない。

写真から横であることが判明している東京も、「東京都選挙執行規程」には様式が図示されているが、「1」の区画が右か左か、順番が縦か横かいずれも記されてはいない。タイトルなどを記す「表示欄」が右端に書かれていることから、地図では「右側が1」に分類した。

島根県も「選挙運動等実施規程」には「市町村の区域ごとに区画の上から下へ」としか記されていない。これは、ポスター掲示板を設置している様子を報道したニュースの写真から、「左側が1」と判断した。

変わっているのは福岡県だ。「公職選挙法及び同法施行令等の規定による選挙運動及び政党その他の政治団体の政治活動に関する規程」にはなんと「表題を右に設けた場合には、区画の右上段から左下段の順に順次左へ」「表題を左側に設けた場合には、区画の左上段から、左下段の順に順次右へ」と記されている。要は「両方アリ」なのだ。島根県同様ニュース画像などで確認すると、少なくとも今回は右側が1となっているが、どちらも認めるとあえて明記されているのは記述がないのとは意味が違うので、地図ではどちらでもないグレーに塗った。

同じ都道府県内でも市区町村ごとに違う

実は東京都を調べる際に、都内の区市町村についても少し調べた。というのも、横に区画番号が増えていく掲示板を見た経験が他になく、そのうえ都の規程では縦横について明記されていなかったため、「あるいは区市町村に任されているのかも」とふと疑問が浮かんだからだ。実際、写真を撮った港区は「港区選挙執行規程」で右から横に並べることを明記していた。

ところが、他の都内区市町村を調べて驚いた。これも東京都立図書館のホームページに「東京都内区市町村の例規集」というリンク集があるので役に立つ。調べると、区市町村によって縦もあれば横もあった。さらに、いくつかの投票区に分割し、投票区ごとに並び方が変わる(公平性を求めてのことだろうか)ケースや、選挙のたびにくじで並び順を決めるケース(杉並区)もあった。区の規程では縦に並ぶはずの墨田区参院選掲示板は横に並んでいたため参院選などの国政選挙は都道府県単位で統一されているのだろう。他の道府県も、当然市町村によってばらばらであることが予想される。

理由の解明は持ち越し

ただ、残念ながらどうしてこのように自治体によって区画の並べ方がばらばらなのかという理由についてはわからなかった。仮説として、縦書きの順番通りにならぶ「右端が1で縦」が最も古く、当時は横書きで右から書いたため「右端が1で横」が派生し、時代が下るにつれて左から書く横書きが普及し一般化したため、「左端が1で縦」のパターンが生まれた——という案を提示しておく。これが正しいのか、全く別なのか。引き続き機会があれば調べてみたい。